「悩み部」の結成と、その結末。(麻希一樹)

これはライトノベルに属するものなんでしょうか。
登場人物の造詣を見ていると、そうとしか思えません。触れれば切れそうな秀才、高飛車なお嬢様、そしてふたりに振り回される平凡な女の子。うわぁ、という感じでライトノベル、むしろヲタク向けマンガの世界という雰囲気すら漂います。そう思わせるのは挿絵にも一因がありますけどね。

お話自体は、「どこから読んでも楽しめる」という触れ込みのショートストーリー。ただし連作ものなので、順番に読んだほうが面白いはず。

もうひとつの惹句は「クセになる意外な結末」だそうですが、それほど意外性はありません。どこかで読んだような観たような聞いたようなアイデアの翻案という風で新鮮味は薄いです。新鮮味が薄い代わりに(なのかどうか)、本文がゴシック体で印刷されており、やたらと字面がクッキリしています。長く読んでいると、ちょっと鬱陶しいかな。

高校を舞台に、新入生三人(秀才とお嬢様と平凡な女子)が結成した「悩み解決部同好会、通称"悩み部"」のメンバーが活躍するストーリーを盛り上げるためなのか、教師に対して手厳しい。
登場する教師は、「校則違反に目を光らせる太目のオババ」だったり、「新米で頼りなくてサイドストーリーで彼氏に甘えるだけ」だったり、「底意地が悪くて自分勝手で挙げ句の果てには妻に離婚されるようなイヤなオヤジ」だったり、と容赦なく「若者にやりこめられてぐうの音も出ないダメな大人」を演じさせられています。
なんだか、映画「小さな恋のメロディ」に出てくる大人たちの描写に似ていないこともない。

まあねえ、若い人には爽快かもしれませんけどねえ。
ちょっとは大人にも同情してやれ、というのは自分が大人だからでしょう。
立派な大人だ、ハンサムで上品な中年紳士を僭称しているくらいですから。


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