考えるナメクジ(松尾亮太)

ナメクジの脳について様々な知見を得られます。
本書にも指摘があるように、「ナメクジにも脳があるのか?」という人がいるそうです。あるよ、そりゃあ。
ただしナメクジの脳は、他の内臓を含めて体液に浮かんでいるという極めてゆるい状態。そこからして不思議な生き物です。

しかもタイトルにあるように、ナメクジは学習することができる。
例えば、ナメクジが好む味のジュースを摂取している際、ナメクジが嫌う刺激を与えます。
するとナメクジは、本来は好みの味にも関わらず、嫌な刺激が来るということを「学習」して、その味のジュースを避けるようになるそうです。

するとナメクジを捕まえて、好物と忌避剤とで「これを食べるとひどい目に会うよ」と学ばせておけば食害が防げるのか。
いや、捕まえたならそこで駆除したほうが早いか。学習したことは数ヶ月で忘れるらしいですし。

他にも、ナメクジは頭部の右横から産卵するとか、生命の危険を感じると産卵するとか興味深い。
マンガ「ドラゴンボール」で、ナメクジをモデルにしたと思われるピッコロ大魔王が、孫悟空に倒されて爆死する前に口からタマゴを産んで子を残す場面がありました。結構科学的な描写だったのかも知れません。

またナメクジの脳で記憶を司る部分である前脳葉は、壊れても再生するそうです。
損傷すると再生ができない人間には羨ましいような仕組みですが、ヨイことばかりではありません。
前脳葉を破壊されると、「学習」したことを忘れてしまうらしい。まあ記憶を書き込んだストレージが破壊されたのだから当然か。
これを人間に当てはめると、ダメージを負った脳が再生した場合、それまでの記憶を失い人格すら変わってしまうかもしれないそうです。人間が長期間に渡って記憶や人格を一定に維持できるのは、再生力の弱い脳のおかげかもしれない、と筆者は述べています。

このように驚くべき知見に溢れた本ですが、一番驚いたのは、筆者が勤務しているのが女子大だということ。
女子大でナメクジの研究、というのは意外過ぎます。と書いたら、差別的な考えなのかしら?

もうひとつ驚いたのは、著者近影がナメクジっぽいこと。本人は似ていないと書いてますが、どうしてどうして!


この記事へのコメント


この記事へのトラックバック