フロムK(いしかわじゅん)について補足

「私を構成する5つの漫画」でご紹介した「フロムK」。この漫画については過去にも一度記事にしているのですが、8年も前のことです。改めて補足として書き足しておきます。

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特殊なのは、その判型ですね。正方形。一見すると、まるでドーナツ盤のレコードジャケットのようです。ドーナツ盤がわからない人はわからなくてよろしい。気になる方はGoogleなりヤフーなり広辞苑で調べるか、周囲のできれば50歳以上の人にきいてごらんなさい。

さて正方形という不思議な判型。その昔、長谷川町子がサザエさんを出版した際(実際に出版を思い立ったのは母親で、実務は姉が奔走したらしいが)、横長の判型だったために売れなかったという実績があります。書店で「並べにくい」と不評だったようです。

それを踏まえると、正方形という判型も相当に扱いにくいんじゃないか。

にもかかわらず、正方形にしたのは理由があります。

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このように、漫画の両側に注釈を添えているからなんですね。一般読者には馴染みのない編集者や広告代理店の人、あまりメジャではないミュージシャンなどを登場させているための注釈でしょうか。その注釈も、最後のページにまとめてしまうと、いちいちページをひっくり返さねばならず、漫画を読む上で不都合だということでこういうレイアウトができあがったのか。

実際に読んでみると、本文(漫画)と注釈を行ったり来たりしながらスムーズに読み進めることができて、大変に読みやすいレイアウトでした。注釈は登場人物だけではなく、「これはこういう事情があった」などもあり、ギョーカイ内幕漫画、楽屋落ち漫画、身内受け漫画みたいなフロムKを一般読者に面白く読ませる工夫でもあったのでしょう。

とは言い条、いしかわじゅんという漫画家が決してメジャな存在ではありません。この本がどれだけ売れたのか。
たった今、アマゾンやメルカリ、ネットオフで検索してみたら、ヒットは皆無でした。熱心なファン、マニア、コレクタが所蔵して売りに出てないということも考えられますが、中古市場に出ていないということは、ほとんど売れなかったんじゃないかと思われます。だって、ベストセラと言われるような本は、小説でも新書でも漫画でも、中古市場に腐るほど出回って100円(税別)でたたき売りされていますから。

売れなかったんだなあ、フロムK。いい漫画だったんだけどなあ。

以下は余談。
この本だけなのか、背表紙の印刷がちょっとずれてます。

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もともとなのか、雑に保管しているうちにずれたのかは分かりませんが。まあ、こういうところも、この本らしさとは感じますけども。


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