考えて見てください。こっちが物心ついた5~6歳には、従兄弟は18~19歳ですよ。幼稚園児から見たら、完全に大人ですよ。しかも昔の若者は、今の若者と違って大人ぶりたがるから、余計に大人でしたもの。
その13歳年上の従兄弟のMさんから最近、ラインをしようと言ってきて繋がりましたので、Mさんの思い出を書いておきましょう。
Mさんの父は鉄道員で、田舎の駅に勤めていました。その田舎駅は、ぼくが幼稚園のころ住んでいた町と近かったので、夏休みなどには母に連れられて遊びに行ったものです。Mさんの父とぼくの父が兄弟で、しかも母親も姉妹でした。なので非常に親しい親類だったんですね。
ある日、Mさんが虫取りに連れて行ってくれました。Mさんは大きな木に登ると、太い枝がが二股になった部分に仁王立ちになり両手で枝をつかみ、全身を震わせるようにして、大きな木をゆらし始めました。大きな木の梢の先までがビリビリと振動し、無数の虫たちが雨のように降り注いで来ました。
たぶん小さな甲虫やイモムシケムシ類が多かったのだと思いますが、その虫たちを捕まえた記憶はほとんどありません。あまりにビックリして捕まえることを忘れたのか、獲物が小さくてあまり喜ばなかったのか、今となっては判然しません。鮮明に覚えているのは、大きなを木をゆらすMさんなんですよ。その印象があまりに強くて、夏休みの絵日記に描いたほどです。

また、この虫取りの前後だと思いますが、ぼくの目の前に、小さなクモが糸をひいて木の枝から下がってきたように見えた、ことがありました。
クモが大の苦手だったぼくは、「きゃあ、クモだ!」と悲鳴をあげましたよ、情けないけど。
するとMさんは、クモの上の空間に回し蹴りをしました。しかし、クモらしき虫は動かなかったのです。
故に、これはクモじゃない、小さな虫が飛んでいるんだろうと言ってくれました。あのときのMさんは頼もしかった! カッコよかった!
もっとも、あとで聞いたら、Mさんもそれほど虫が平気じゃなかったらしいですね。
Mさんの姉にC子さんいるのですが。
このC子さん女傑で、クモだかケムシだかを棒の先に乗せて、Mさんを追いかけ回すことがよくあったらしいです。そういうとき、Mさんは泣きながら逃げたという話を、大人から聞きましたよ。
それはまあ、小さいころの話で、ぼくを虫取りに連れて行く年頃には平気になっていたものか、どうか。
姉に泣かされた話はともかく、虫取りの話は、Mさんの父親の葬儀のときに、Mさんの息子さんとお孫さんにしたはずです。息子さんとお孫さんに、少しはMさんの若かりし頃の武勇伝が伝わっていたならヨイのですが。
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