ぼくんちの震災日記(佐々木ひとみ)

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プロローグは、宮城県のお菓子「がんづき」をわけるための、家族でのジャンケンゲームで始まります。
それが夢だったとわかり、
『昨日を堺に、何かが大きく変わってしまったということだ』
『昨日までそこにあった「いつもの朝」は、どこか遠くへいってしまった』ということが語られます。

『誰かが地球をつかんで、めちゃくちゃに揺さぶっているみたいな激しい揺れ』に襲われた、2011年3月11日の震災からの、主人公の家族が体験した四日間を描いたお話です。

幸いなことに、主人公の家は倒壊や津波の被害はまぬがれたので、避難所ではなく自宅で過ごすことにしました。電気や水道、ガスといった生活インフラは絶たれてしまい、食料も十分ではない環境です。そうした中で、色々と工夫をし、家族で力をあわせて、それを「がんばろう週間」と名付けて懸命に生きる姿は、人間に力強さを感じます。

食料を求めて行列した人たちが、ごく自然にお互いの状態や今できる工夫を話し合う場面などにも、人間の強さを感じますし、心温まる場面です。こうした交流は、被災地で実際にあったことらしいですね。

がんばり続けた主人公が、辛さのあまり泣き出すところにも胸を打たれます。
そうなんですよ、泣きたいときには泣いてもいい。がんばることも大切だけど、無理してもいけない。
そして、あとになって「あのときは、がんばったな」と自分で胸をはれるがんばり方をすればいいんです。

被災にも色々な段階があるでしょう。亡くなった方、家族をなくした方、家をなくした方、仕事を失ったかた。ですが、どの段階もそれぞれの被災であって、決して他者と比べるべきものではありません。

震災体験を書籍にした方の中には、「その程度で被災者の代表みたいな顔をするな」と心無い批判を受けた方もいるようです。某通販サイトのコメントにあったのですが、それを見て、とても悲しい気持ちになりました。

被災であれなんであれ、人の数だけ体験があります。この本も、著者の佐々木ひとみさんの体験を元にされているといいます。佐々木ひとみさんは、「私の被災体験は、深刻な被害を受けた方に比べたら些細なもの」としておられますが、それはあくまでもご自身での謙遜ですから。

被災と自宅での避難生活を描いた本としては、ひが栞さん作の「生き残ってました。」も思い出します。

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これも、折にふれて手に取りたい本です。

荒地の家族(佐藤厚志)とご一緒にどうぞ!

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この記事へのコメント

  • ひが栞

    書影掲載ありがとうございます。当時、編集さんに安否確認というよりネタ探しの意味合いで「誰か(身近で)亡くなった方いないんですか~?」と残念そうに聞かれました。
    被害が軽いくせにおこまがしい、と自覚しつつも何かに押されるように必死で書いていました。
    「人の数だけ体験がある」ーという言葉にとても救われました。
    私もしろまめさんのように温かな視点で色々な本を発掘したいです。
    「ぼくんちの家族」「荒地の家族」どちらも未読なので読みます。
    2023年03月22日 01:01
  • しろまめ

    ひが栞 さん>>
    コメントありがとうございます。

    「生き残ってました。」は自宅にあるはずなんですが、見つからなかったので、やむを得ずkurashioのサイトから拝借しました。
    いずれ探し出して、差し替えておきます。

    「人の数だけ体験がある」を好意的に受け止めていただけたみたいで、安心しました。
    決して、被災の程度を比較したりするつもりではなく、さまざまなんだよ、ということを言いたかったので……。

    佐々木ひとみさんの本もお楽しみください。
    児童書で読みやすいですし、他にも仙台を舞台にした本を書かれています。

    2023年03月22日 21:35