パット・メセニーソロライブ(Dream Box Solo Tour)in札幌リポートの続き

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ピカソギターでの演奏を終えたあと、メセニーは「ピカソギター」と言って楽器を紹介する仕草をしました。ギターを片付けようとしていたスタッフが、それに応じるようにしてピカソギターが客席からよく見えるようにスタンドに立てかけたのが、スタッフにはちょっと予定と違ってるけど対応しました、という風情でよかった。
メセニーは続けて「ナーウ、バリトンギター」と言って、「ワン・クワイエット・ナイト」、「ホワッツ・イット・オール・アバウト」とからの曲を弾き始めました。通常のギターよりも低い音域で落ち着いた音楽世界を奏でてくれます。

その後はフルアコースティックエレキギター(よくジャズで使われるギター)を持ち出すなど、実に多彩な楽器と音楽を聴かせてくれました。フルアコギターこそ、アルバム「ドリームボックス」の「ボックス」ですね。フルアコギターを表すスラングです。メセニーのアルバムではめったに聴けないブルースっぽい演奏も聴かせてくれました。
低音弦で演奏したベースラインをデジタル録音して、それを再生しながらインプロヴィゼーションを行うなどの仕掛けでも楽しませてくれましたよ。

残念なのが、アコースティックギターで演奏した「ラスト・トレイン・ホーム」。確かに、メセニーは「ラスト・トレイン・ホーム、アンド、ニュー・テューン……」と言ったのですが、演奏が始まってもぼくは、ラスト・トレイン・ホームのあの有名なメロディを感じられなかったのですよ。メセニーを知らない人でも一度は耳にしたことがあると思うのですが、旅番組などのBGMとして。
やはりライブに来ていた高校の同級生にSNSで確認したら、「確かにラスト・トレイン・ホームだった」というのです。ぼくの耳がどうかしていたのか。どんな耳をしているんだか(こんな耳byパタリロ)。

そしてフィナーレです。

メセニーの背後の黒い緞帳があがりました。現れたのはオーケストリオン! たぶん、2012年のツアーでも使われたのと同等か、その改良型でしょう。背が低めのタンス2本分くらのボリュームで、左右にパーカッション、中央にマリンバとか鉄琴を配しています。パーカッションは響くたびに光を反射して、音と光の粒がステージから客席へと、そしてホールいっぱいに溢れ出すようにオーケストリオンが音を奏でます。その様子はまるで、おもちゃ箱をひっくり返したような、と書いてしまえば月並み過ぎて、おもちゃ箱に魔法をかけて音楽を演奏させているようでありました。そんなオーケストリオンののせて、メセニー昔ながらのギターシンセサイザ風のサウンドで奏でるメロディは圧巻でした。

まさに夢のフィナーレ、夢から覚めるような演奏でした。


演奏が終わって舞台袖にメセニーが引っ込みますが、ここはお約束のアンコールの拍手が鳴り止みません。
拍手に乗ってメセニーが登場。舞台右手に配された黒い布をかけた物体に近づくと、おもむろに黒布を取り去ります。現れたのはどうやらベースギター、立ったまま弾けるようにスタンドにセットしてあります。ベースラインを奏でつつ、例によってデジタルで録音。それを再生しつつ、舞台左手に移動すると、同じように黒布をかけた物体から布を取り去ります。今度はアコースティックギターです。やはり立ったまま弾けるようにスタンドにセットしてあり、アルペジオを奏で、ハーモニクスも響かせ、これもデジタルで録音して再生。
ここで背後の黒い緞帳が再びあがり、オーケストリオンが登場。あっという間にメセニーが奏でる音楽の洪水に飲み込まれました!
このアンコールでは、ギターシンセサイザではなくフルアコギターを弾いたように思いますが、記憶が……。
このアンコール曲はたいへんに気持ちの良いノリで、たいへんな高揚感がありました。どんな曲だったか、どんなフレーズだったかはまったく思い出せないのですが、この日一番の演奏だったと思います。
隣席の女性(中学生くらいの男の子を連れた中年女性)が、我知らず、という感じで虚空で手を振ってましたよ。ぼく自身も気がついたら、ピッキングするように手を動かしちゃってましたもん!

このあと、もう一度アンコールで戻ってきたメセニーがアコースティックを演奏。これはドリームボックス的な、少々とらえどころのない曲だったかな。
締めはアコースティックギターでビートルズの「アンド・アイ・ラヴ・ハー」を弾いてくれないかなー、と思っていたのです。

そしていったん場内が明るくなりましたが、アンコールの拍手が鳴り止みません。
「さすがに、もうないよなー」と思っていたけど、なんとメセニーが再々登場!
始まったのが、「アンド・アイ・ラヴ・ハー」でしたから、感激!!

すべての演奏が終わったのは、終演予定の18:40を超過した19時ころでした。約2時間弱、たっぷりとメセニーの音楽を堪能できましたです。
同行してくれた奥さんも、楽しんでくれたようで何よりでした。

なお、この曲順や演奏順、使用したギターなどについては、記憶違いがかなりあるかと思います。
そのへんは、まあ「だいたい、こんな雰囲気だったよ」ということで、ご容赦を。
特に数年後にメセニーのコンサートを振り返ってみたい自分よ、「どうしてもっと詳しく書いておかないのだ!」と怒らないように。
そんなに記憶力のいい自分じゃないだろう?

使用されたギターは、おそらく十数本。予備のギターを含めると20本以上は持ってきていることでしょう。
メセニーは今回の日本公演初日である札幌の次は、新潟で公演です。新潟公演は今日(2024/01/16)、その後、高崎市、東海市、サンケイホールまでは連続公演です。
札幌と新潟に一日挟んでいるのは、休養日というよりはむしろ、悪天候などによる足止めを懸念してのことでしょうね。
たぶんコンサート終了後、大急ぎで新千歳空港に向かったと思われます。実際、翌日(2024/01/15)は悪天候(吹雪)で飛行機の欠航が相次いだみたいですから。
移動のための時間も考慮して、17時開演という珍しいコンサートにもなったのでしょう。新潟以降は、ぜんぶ19時開演なんだもの。

まあ、そのおかげでコンサートの後、奥さんとゆっくりと夕食を食べて帰ることができました。

この記事へのコメント

  • しろまめさん、どうもです。
    いや~、夢のような時間を過ごされましたね!
    会場が明るくなってからの再々登場は感激。
    ご本人も演奏するのが嬉しくて仕方ない感じかと思います。
    仕事ではなく純粋に音楽でみんなを楽しませたいという思いが
    観客に伝わるからこそ、長年人気を保ち続けるのでしょう。
    コンサートの後に、ゆっくり食事というのもいいですね~(笑)
    2024年01月16日 22:07
  • たけちゃん

    そうなんですか?すごいですね!!
    2024年01月17日 09:11
  • しろまめ

    海 さん>>
    コメントありがとうございます。

    確かに、おっしゃるとおりと思います。
    「仕事」である以上に「喜び」なんだと思います。
    喜んでいる観客に乗せられて、本人もノッて弾ける、みたいな感じでしょうね。
    それが観客に伝わって、といい循環になる。

    その余韻で食事するのもいいものでした(笑)。
    ちなみに赤レンガテラスの「利久」というお店で、牛タン定食を食べて帰りましたです。

    2024年01月17日 09:48