成功を手にする人のちょっとした作法(立川竜介)
作者が「立川」だと言って、落語家さんが書いた本ではありません。金沢の金箔職人さん由来のコスメ、「まかないコスメ(現在はMAKANAI)」を立ち上げた元ゴーストライターによる本です。元ゴーストライターとコスメとが結びつきにくいかもしれませんが、詳しくは本書を読んでいただくとして……。
ゴーストライターの仕事のひとつが世にいう成功者、俗な表現をすれば「勝ち組」の人が出版する本の代筆です。ベンチャーで起業して成功した人、名前の売れたコンサルタント、有名なスポーツマンやタレントが出す本というのは、たいていがこれです。そういう人たちは、成功した分野では特別な才能を発揮したかもしれません。しかし商品としての本を作るスキル、そのための文章を書くスキルなどはありません、というか、なくて当たり前。そこでゴーストライターと呼ばれる人が、成功した人たちに取材をして文章にまとめていくのですね。
ですから、各分野の著名人が書いた本のほとんどは、その著名人が書いたというよりも、著名人が話したことをゴーストライターが文章にまとめたものです。
ただ営業的に、その著名人が書いたことにしておいたほうが売れ行きがいいので、ゴーストライターの名前が出ることはめったにありません。
立川氏もゴーストライターだったのですが、とある事情で「まかないコスメ」を起業しました。もちろん初めての体験で、経営に苦しみます。そこで思い出したのが、ゴーストライターとして接した数多くの成功を手にした人たち。一時的に名前が売れたものの、すぐに凋落した人も少なくありません。しかし長く活躍を続ける人たちもたくさんいます。
そういう本物の成功者たちの立居振舞、言葉、考え方や習慣を思い出して実践してみたところ。
あら不思議、みるみる業績は回復して、立川氏自身が成功者として本を出すことに……と書いたら嘘っぽいどころか、大嘘だ。
しかし、一定の成果はあったということです。一度は倒産するも、今ではソラマチにも出店しているくらいなんですから。
さて、成功を手にしたの人たちの作法とはどんなものかと言いますと。
いくつかピックアップしますが、どれも本当に「ちょっとしたこと」で、たいしたことがないように見えます。
例えば「鼻毛を見せない」とか「汗はハンカチで拭く」とか。最低限見苦しくない程度には、身だしなみを整えておく、ということです。
よくサラリーマン向けのマンガで、主人公のネクタイは緩んで描写されていました。形にとらわれない、というのか、会社組織の中にあっても自由だ、と粋がりたいのか。
成功を手にした人は、これとは反対であるような気がします。
人間を外見で判断するな、とはよく言われることです。
よく言われる、ということは、とりもなおさず人間は人間を外見で判断する、ということです。
だったら外見を整えておいたほうが、人間関係を円滑にするに違いありません。
成功を手にする人は、このことをよく分かっていて、決して見苦しい格好や行いはしない。
それを見習ったからといって、必ずしも成功を手にできるとは限りませんが、少なくとも成功に近づける。それは立川氏が実践済みですし、反対の行動をとった場合、かなり悲惨な末路を迎えるであろうことも観察されています。
つまりは成功できずに消えていったゴーストライターの事例がいくつもあるのです。ゴーストライターの中には、見てくれに構わなさ過ぎる人が少なくない。そのタイプの人は「外見ではなく仕事で判断してくれ」と言いがちなのですが、見てくれで判断されて仕事ももらえないのではどうしようもありません。しかも実際のトコロ、外見の難を飲み込んで仕事をさせてみると、だいたいはダメなライターであるらしいし。
大事なことなので、二度書きます。
成功を手にする人は、決して見苦しい格好や行いはしないのですよ。
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