老いの失敗学(畑村洋太郎)
失敗学の権威、畑村洋太郎が見つけた「老い」と「失敗」の共通点から老害にならない方法を学ぶ。
ふたつほど鮮明に記憶に残った部分があります。
ひとつは、「部分最適全体最悪」という考え方。
ある問題や課題を解決するためには最善と思える方策が、全体としては悪い影響を与えるというものです。工学の考え方らしいですね。
例えばコンピュータやネットワークのウィルス対策として、強力なセキュリティシステムを導入したとしましょう。
それによりウィルスは完全に防ぐことができたし、不正アクセスもシャットアウトできたとしましょう。
これ、セキュリティの点だけで見れば、「めでたしめでたし」です。
ところがそのために、コンピュータやネットワークが重くなったり、パスワードの管理が百倍くらい煩雑になったとしたら、ユーザにとっては迷惑なハナシです。
こういうことって、確かにありそうですねえ。
記憶に残った2つ目は、「勝手脳」という考え方。
ピカソの『ゲルニカ』(真作)を見た時、自分の脳が不思議な挙動をしているように感じたそうです。それまで抽象画に興味がなかったし解らなかったのに、『ゲルニカ』と頭の中で、言語を介さない会話をしようとしてる感覚を味わいたいそう驚いたとか。
これは無意識下での脳活動と考えていますが、よい方に作用すれば加齢とともに感受性が強くなったりもする。
ただし悪い方向に作用すれば、認知症と疑われかねない。なぜなら自分でも理解できない脳の作用に翻弄されている様子は、周囲から見たら認知症のようにも見えるから。
確かに年齢を重ねることで体験や知識が蓄積され、自然と理解力や洞察力が高まったり、感性が変わってくることはありうると思います。
自分自身、以前は興味のなかった花が気になるという変化を感じていますし。
こうした変化はゆるやか経年変化であるのに対し、「勝手脳」は何かのきっかけで急激に変化する、と考えればわかりやすいのかしら?
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