タイトルを見て、
「だるまさんがころんだ、じゃないの?」と思った方もいるかもしれません。
その通り、これは「だるまさんがころんだ」を題材にした物語です。もっと詳しくいうなら、奈良県にある王寺町が開催している「全国だるまさんがころんだ選手権大会」に挑戦した少年少女プラス大人の物語。
行動が暴走気味の主人公カン太が、自分を祟っているタイシや仲間とともに「全国だるまさんがころんだ選手権大会」で優勝を目指します。サッカーでも野球でも、積極性が過ぎて失敗していたカン太。そんなカン太には、「だるまさんがころんだ」のようにピタリと静止する競技は不向きなんじゃないか。そこでカン太は、祟の金縛りを逆に利用することを思いつくのですが……。
期待を裏切らない少年の成長物語です。
ところで、作者の林けんじろう氏はマッチョだと思います。昨年(2024年)、福島正実SF童話賞贈呈式でお会いした林けんじろう氏はスリムで優しそうな笑顔が素敵なかたでした。一方でマラソンに挑戦したり、体を使うことがお好きなようです。その意味で「マッチョ」と書いたのですよ。前作の『ブルーラインから、はるか』も真夏の瀬戸内海にかかる橋を自転車で走り切る少年たちの物語でしたし。
こういう体を使う話というのは心に刺さります。やっぱり人間は動物ですから、体を動かすことが好きで、そうしたことに共感を持つものですから。スポーツや踊りと言った題材が人気なのも頷けます。
同時に文字だけで、体を使う話を書くのは難しい。体の動きやアクションを描写するなら、漫画とか映画にはかないません。しかし体を使うことで感じるもの、たとえば汗をかくほど暑いとか、筋肉が痛くなったとか、疲れたとかは文章で表現するほうが伝わりやすい……こともあるはずです。
日ごろからスポーツも運動もダンスもしない色男は、それらをどう書いたらいいのか。
林けんじろう氏の作品には、学ぶところがたくさんあります。
この記事へのコメント