ピーチとチョコレート(福木はる)

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第64回講談社児童文学新人賞佳作入選作にしえ、福木はるさんのデビュー作です。
主人公はぽっちゃり体型の外見にとらわれて本当の自分を出せずにいた。ところが偶然にラップをはじめたことで、自分の中で何かが変わっていくことに気づきます。
もちろん簡単にすべてが解決するわけではないのだけど、少しずつ変わっていく主人公の姿に勇気づけられる人は多いでしょう。

という本筋とは別に、文化祭のクラスの演目を決めるホームルールのシーンは共感で心底震えました。
運動部に熱中している男子が、主人公に対して「ちゃちゃっとやっちゃって、簡単でしょ?」みたいなノリで押し付ける場面。いかにもありそう。運動部が忙しいと言えば、すべてが許されると思っている甘えと傲慢。そして無責任。
こういう言い訳は大人になってもよくありますからね。仕事が忙しい、得意先と約束がある、といえば何でも許されると思っている輩が。

この本の感想としては、ちょっと脱線したな。

ラップはほとんど聞いたことがないんですが、どれも同じようなビートで同じような調子でブツブツ言っているだけ、みたいに感じていました。まあ、韻を踏んでいるのはわかりますけどね。本書ではラップの基本構造や約束みたいなことも学べます。
そういえば、主人公がラップで友だちを挑発してステージに引っだすシーンがありました。挑発というと剣呑ですが、ラップで語りかけて、相手がラップを返すのです。平安貴族が歌のやりとりをしていたのと似ていますし、ジャズのインター・プレイにも似ているところもある。

ツイッタ(だーかーらー! とっくに「X」に名前が変わって以下略)でも、ツイート(だから以下略)に対する返信があってこそ盛り上がるし、こうしたブログ記事にもコメントがついたりします。

古今東西、文化やテクノロジーが変わっても、人の営みはあまり変わらないのだなあ。

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