第64回講談社児童文学新人賞受賞作品です。作者は「まひる」さん、とカッコでくくらないとわかりにくいような気がしてしまった。イラストレータさんにの中には、ひらがなで単語ひとつ、のペンネームの方が増えていますが、作家ではまだ少ないかな……と思っていたら。
ぼくもペンネームを「しろまめ」にしてもよかったかな……。
『王様のキャリー』というタイトルを見て最初に連想したのはキャリーバッグでした。王様がキャリー式のスーツケースを持って諸国を見て回る話だと思っていたけど、ぜんぜん違います。
ここでいう「キャリー」とはコンピュータゲーム用語で、上手いプレイヤが自分よりヘタなプレイヤと組み、そのプレイヤを勝利に導くことです。つまり上位プレイヤが下位のプレイヤを勝利という栄冠のある場所まで連れて行く、という意味ですね。
と、「キャリー」の意味を説明したことで、この作品の背景にあるのがコンピュータゲームだということがわかります。ぼくはゲーム(ゲームといえばコンピュータゲームだろうから「ゲーム」と記す)を一切やらないので、この話についていけるか不安でした。が、そんな不安は数ページで吹き飛びます。ゲームを知らなくともわかるように書かれています。もっとも、銃器類に興味があったので「ガトリングガン」とか「グレネードランチャ」という言葉が出てきても戸惑わないという基礎知識もありましたが。
物語では、この「キャリー」という言葉が実に大きな意味を持ちます。
たとえばタイトルの『王様のキャリー』ですが、これ自体、いろいろな意味に解釈が可能です。「王様がキャリーしてくれる」とも解釈できるし、「王様をキャリーする」ともとれます。そして読んでいるぼく自身、作者によって物語世界へとキャリーされて没入してしまいました。
第64回の講談社児童文学新人賞作品は、本作品のほかに佳作2編が刊行されています。
比較するのはよくないと思うものの、正直なところ『王様のキャリー』は圧倒的でした。物語の筋書きといい、キャラクタの造形といい、申し分なかったです。
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