幇間みたいな共感力はいらないけど

いつもコメントをくださる海さんが「調子のいい人」をブログ記事しておられます。海さんのいう「調子のいい人」とは、調子のいいことばかり言うけど口先だけみたいな悪い意味ではありません。相手に対する共感力が高い人、こちらの話に合わせてくれる人、という意味です。こちらの言う事を否定しない人、とでもいうのかな。

職場などで「大リーグの甘木選手の活躍は素晴らしいね~」なんて話題が出たとします。
そういうとき、たとえ自分はまったく興味がなくても、「そうですよね~」なんて相槌を打てる人。こういう人は、きっと周囲から好かれることでしょう。

これで思い出したのが、落語の『幇間のうなぎ』です。『鰻の幇間』という場合もありますが、幇間(太鼓持ち)が知っているような知らないような曖昧な客に取り入って昼ご飯を食べようとする噺です。
噺の冒頭、つまり枕の部分で、幇間がどんなことでも相手の言う通りに応じることを語ります。ここで太鼓持ちの性質を印象付けるのですね。

客「今日は暑いな」
幇間「まったくです、暑すぎます、汗が滝のようです」
客「だけど、どうかすると寒いときもあるぜ」
幇間「そうなんですよ、寒くて寒くて、吐く息が白くなります」
客「芸人の甘木だけど、あいつはいい奴だな。俺は好きだな」
幇間「あたしも、大好きです。いい人です、仏様のようです」
客「だけど、ときどき、憎たらしいことを言うんだよな」
幇間「そうですよね~、口が悪いことで有名ですから」
客「ああいう奴は、一度、なぐってやろうかと思うんだ」
幇間「そうです、そうです。蹴飛ばしておやりなさい」
客「ところで腹が減ったなあ」
幇間「そうですよね~、お腹がペコペコで、背中とお腹がくっつきそうです」
客「だけど、飯を食うには早いよなあ」
幇間「そうです、そうです。まだ、お腹がパンパンですから……」

もう何の会話だかわかりませんが、とにかく相手のいうことに合わせちゃうのが幇間です。
共感力も度を越すと太鼓持ちみたいになっちゃいます。

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とは言い条、ぼくなんかは幇間の爪の垢を煎じて飲んだほうがいいのかもしれません。
いつだったか北海道の野球チームが優勝したらしく、仙台の支店に勤務している知人から電話があったんですよ。
「優勝、おめでとう!」って。
まあ、電話でいきなり野球の優勝お祝いを述べるほうもどうかしていますが、ぼくの返事も相当なもんです。
「え? なんのこと? プロ野球の……? へえ、そうなの。いや、知らないよ、興味ないし。で、なんの用事?」

正確なやり取りは覚えていませんが、自分の性格を考えると大筋こんなふうだったと推定されます。
感じ悪いな!

共感ほどの幇間力、じゃなかった、幇間ほどの共感力まではいらないけど少しは爪の垢ですよ。
とりあえず、今度「優勝、おめでとう!」と電話をもらったら、「ありがとうございます」と答えておこう。
なんのことだかわからなくても、そのうちわかるだろうし、わからなくても困らない……と思うけど。

それと大切なことは相手の発言に対して「そうですよね~」と朗らかに応じることか。
「だけど」「でも」「どうせ」などDで始まるのはよくなさそう。
「そうですよね」、とSで始まる言葉から。
「さいですか」とか「知らんけど」とか「すごいですね」とか「せめて」とか「ソクラテス」とか。

この記事へのコメント

  • しろまめさん、どうもです。
    共感力というものを突き詰めると
    「聞き上手」というのがあるかもしれませんね。
    反応がいいから、ついつい話をしてしまう、
    というのはあるでしょうね。
    無反応とか反応薄とか、聞かないで自分の
    話ばかりするとか。そうなると自然と人が
    寄ってこなくなってしまうかもしれません。
    ちなみに、私の職場で5年以上前になるのですが
    まさに理想形ともいえる環境に私の席が
    あった事があります。
    私の左隣は10歳以上年上の男性社員でして、
    とにかく温厚な人で、それでいて仕事が
    できるから、よくフォローしてくれました。
    そして右隣は私より15歳以上若い女性社員であり、
    社内で一二を争うほどの美人さんでした。
    両隣ともに、共通する事として
    「聞き上手」なのです。
    おまけに私の寒いギャグにも即反応してくれるほど
    笑いのハードルが低い(低くしてくれてる)。
    今振り返ってみても、素晴らしい座席だったな~。
    優しい男性社員は定年で退社してしまい、美人女性社員は
    寿退社。戻れるなら、あの頃に戻りたい!(笑)
    2025年10月03日 22:56
  • しろまめ

    海 さん>>
    コメントありがとうございます。

    いや~、聞くだに羨ましいお席だったのですね。
    社内でも特等席ではないでしょうか。もしかしたら、ご褒美席だったのかも。

    しかし懐かしんで戻りたがっていても仕方ありません。
    今度は海さんが、優しい年長社員として後輩たちをフォローしたり、つまらないジョークにも笑ってあげたりしなくては!

    社内一の美男子を目指してもいいですし、なんなら、社内一の美女を目指してもかまいませんし(笑)。

    2025年10月04日 17:30