楽しくアルバイトをするための能力は

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働く人の賢さとはなにか、などという難しい問題に挑んでみましたが、柄にもないことをするものではありませんね。どうにもまとまらなかった(笑)。

それにしても人間は創造せずにはいられない生き物なのでしょうか。たとえ時間給や日給の学生アルバイトでも、工夫したり自発的に動きたくなることはあるものです。

甘木学園大学のハンサムなオンボロ学生だったころ、よくやったアルバイトは肉体労働。肉体労働とは言っても、建設現場とか道路工事といったハードなものではなく(学生向けのアルバイト周旋所では危険を伴うアルバイトは禁じられていたから)、せいぜいが什器の搬入とか搬出とか。この場合の什器というのは、お店のショーケースとか展示用の棚や台などですね。ああいうものを受注生産している会社があって、そこからトラックで運ばれてきたものをお店に運び込むのです。大抵はキャスターがついているので、それほどきつい仕事ではありません。

この仕事が好きだったのは、深夜とか休業日の店舗やデパートの中でお店の展示スペースを組み立てていくのが面白かったからです。大勢の学生アルバイトと声を掛け合い作業を進めていくのは、文化祭の準備をしているような高揚感すらありました。さらに面白くなるのは、レイアウト図を見せてもらって作業させてもらえるときです。はじめのうち、雇い主の人やお店の人が、「このショーケースはあっち」「この棚はそっち」とか指示しているのですが、なにか用事ができて不在になることもあります。そうなるとアルバイトは手持ち無沙汰で、まあ休憩していてもいいのですが、周囲が忙しそうにしていると、それも心苦しい。さらに時には指示する人が図面を読み間違えて、やり直しということもあったり。

そういうとき、「図面を見せてもらっていいですか?」と言ったのは、擦り切れたジーンズと薄汚れたトレーナーを着たハンサムな大学生でした。簡単に言うと、ぼくです。図面を見せてもらうと、指示をする社員さんがレイアウト方向を逆に見ていたことがわかりました。たとえば搬入口を上にして見るのが正しいのに、下にして見ていたりする。そうすると配置すべき部屋の形や他の展示スペースと食い違ってしまうので、什器が収まらないわけですね。什器会社の社員さんもいろいろで、什器は作れるけどレイアウト感覚がない、営業担当なので実際のレイアウトができない人もいたのです。レイアウト感覚のない社員さんが「大丈夫かい?」と心配そうにしているのをよそに、図面を見ながら什器の然るべきところへ配置していくと、あっという間に片付いた、ということもありました。

ここまでアルバイトが主導できるケースは多くはありません。ですがそういう機会は逃さず、自発的に仕事をする気持ちよさを十分に味わっていたものです。その充実感はアルバイト料以上で……とは言いませんけど。

あとで知ったことですが、空間把握力というのか、位置関係とか立体的な認知能力というのがあるらしいです。頭の良し悪しではなく、単なる認知能力の差なんですね。立体的・空間的な認知能力が弱いと、プラモデルを組み立てることが苦手だったりするようです。甘木学園大学の先輩で、札幌市内でも有数の進学校出身の人がいたのですが(そういう人でも三流大学に入学するのだ)、プラモデルを完成させたことがないと言っていました。ぼくは什器をレイアウトするような認知能力はあったみたいですし、プラモデルを作るのも割と得意でしたね。ただ不器用なのと完成を急ぎたいタイプな上にハンサムでした。それで仕上げが雑なのが最大の難点でした。どうせなら、じっくりと丁寧に作ればいいのに。だけど、それが性分なので仕方ない。

什器をレイアウトできても、不器用だから線もまっすぐに引けずに字が下手だったり、絵も下手だったり、楽器演奏も下手だったりします。スポーツ全般が苦手なのも、結局のところ不器用だからでしょう。しかも体力がないから、不器用を補うための練習もできないと来ているんだから救いようがない。

人間、得手不得手というものはあるので仕方ないのですが、什器をレイアウトする機会よりは字を書くことのほうが多いので、できたらもう少し器用でありたかった。

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