本を読めなくなった人たち(稲田豊史)

これはとても示唆に富んだ一冊でした。

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タイトルから想像するに、「本ヲ読マナイ人タチハコンナニ損ヲシテイマスヨ」的な内容かと思ったら、さにあらず。もちろん、そういう内容もあるのですが(それを期待して買った面はある)、本を読む、文章を読むほうが少数派なのだと思い知らされる内容も含まれています。世の中には、本を読むどころか、ちょっとした説明文でも読むのが苦手、という人がいるのだそうです。

「だそうです」なんて他人事みたいに書きましたけど、言われてみれば思い当たる。小説は読めるのですが、情景描写が苦手です。
あまり上手い例ではありませんが、
「夜明けとともに、大地には黄金色の光がさし、その光はやがて木々の葉の姿を、一枚、また一枚と鮮やかに浮かび上がらせ、秋の気配に緑色を失って黄色くなりかけた葉はより一層、朝日の輝きをきわだたせ、夏の名残を留める緑を残した葉は、葉脈の……」
疲れたからやめますけど、「朝が来た」ということを長々と描写する本もあるのですよ。そういうところは、だいたい読み飛ばしてしまいます。
情景描写でなくても、推理小説を読んでいてトリックの解説部分が長くてややこしいと、やっぱり読み飛ばします。トリックがわからなくても、たいして気にならない読者ですので。そんなヤツは推理小説を読むな、と言われそうですが。このように、本を読んでいても、苦手な文章もある。ならば、文章そのものが苦手という人がいてもおかしくありませんね。

ましてや現代は、本を読まなくとも、文章を読まなくとも絵とか動画というメディアが豊富にあります。苦手なら、無理をして文章を読む必要がない世の中に暮らしているのかもしれません。

よく「文章で読めば数秒の説明を、どうしてわざわざ十分もかけて動画で見るのか?」なんて意見がありますが、文章が苦手な人にすれば、動画でサクッと説明を聞いたほうが早いんですね。

確かに「靴紐の結び方」なんて、図解なしの説明文で読むよりも、動画のほうがわかりやすいはず。だけど、わかった気になってしまうのも、動画と音声のほうが……なんて思うのは、ぼくがテキスト(文章)の人だからかな。


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